COOK MAGAZINE

かわいさ満点! “クックマ号”が豊橋の街を駆け巡る!【前編】 ~豊橋鉄道さんに聞く市電の歴史とここだけの話~

2020.12.29
COOK MAGAZINE
text:Ai Fujita(futatema)
Photo:Yoshihiro Ozaki(daruma)

豊橋の風景と言ったら何を思い浮かべますか?手筒花火、吉田城などいろいろありますが、誰もが知っている豊橋の風景と言ったら、やっぱり!
豊橋の街を走る路面電車、通称「市電」ではないでしょうか?

豊橋では「あたりまえ」の路面電車ですが、実は現在では全国に19事業者しか残っていません。東海地方では豊橋が唯一なのだそうです。生活に根差した市民の足であり、地域の文化的遺産としても近年その存在価値が見直されています。

実は豊橋の市電は、バラエティーに富んだラッピング広告でも有名。
そんな市電のラッピング広告に、この度クックマートのマスコットキャラクター「クックマちゃん」をモチーフにした「クックマ号」がデビューすることになりました!

せっかくなので、デビューの瞬間をちょこっとだけ覗いてみましょう。噂をすればほら…

駅前で待ってると…来ました〜クックマ号!
これが、クックマ号のフロント。可愛い・・!顔がクックマちゃんになってる?!さらに、電車の扉もクックマちゃんの大好物のリンゴになってますね

「豊橋の風景を楽しくする」ことを目的にデザインされた、クックマ号!
クックマ号デビューを記念して、クックマートを運営するデライトの白井社長とクックマちゃん、クックマガジン編集部が豊橋鉄道さん本社を訪ねました。デライトの思いと、豊橋鉄道さんの思いが交差し、どんなお話が飛び出すのか!?

入り口から既に鉄道マニアの心をくすぐる仕掛けが満載の 豊橋鉄道さん本社の受付にて、記念にパチリ! 左から総務部の森下さん、鉄道部の梅村さん、クックマちゃん、クックマートの白井社長
クックマちゃんもインスタスポットでちゃっかり記念撮影(笑)

豊橋鉄道さん:
クックマ号運行スタート、おめでとうございます。デザインもとっても可愛くて、社員からも大好評ですよ!

白井社長:
ありがとうございます!クックマ号運行は私たちの念願だったので、非常に嬉しいです。5年ラブコールして、今回やっと夢が叶いました。クックマートは豊橋の東西南北にお店があるんですが、数年前、本社を市電通り沿いに移転したんですよ。それで、“あとはクックマートの市電を走らせたら、最後の1ピースが揃う!”なんて思っていたんです(笑)

豊橋鉄道さん:
そう言っていただけて嬉しいです。市電のラッピングは豊橋の街並みをつくるものでもあるので、市民の方からの反応も楽しみですね。実物のクックマちゃんにも、初めて会えました。来てくれてありがとう、今日はよろしくね。

市電の歴史と、豊橋に残っている理由

──市電って、100年近くの歴史があるんですね!

豊橋鉄道さん:
はい、大正14年からで、当時は全国の至るところで路面電車が走っていたんですよ。もうすぐ100周年というと驚かれることが多いですが、鉄道業界は大体、100年前後の企業が多いんです。豊橋は元々、軍隊のある軍都だったことをご存知ですか?昔は車が高価だったので、人々の移動手段は決まって鉄道で、神社・仏閣・温泉などの近くに駅がありました。当時、東田坂上のあたりには、遊郭もあったそうですよ。豊橋駅前で買い物をし、遊郭まで遊びに行く…そんな暮らしがあったようです。

昭和10年頃の豊橋の街と市電

白井社長:
そのお話を聞いてから通ると、当時の様子が浮かんできそうですね。東田のあたりは現在の区画を見ても当時の痕跡が見られて面白いですね。それから順調に交通網として発展していったんですか?

豊橋鉄道さん:
いえ、実は一度、豊橋の市電は昭和20年の大空襲で全焼しているんですよ。そのタイミングで自治体がインフラの整備を行って、ゼロから都市デザイン・街路整備が行われました。当時は車も高価でトロリーバスが通るには道が狭かったので、路面電車が交通網の中心だったんです。豊橋の市電は復興の中、異例のスピードで、3ヶ月で復旧しました。

昭和32年頃、復興した市電が豊橋の街を走る様子

それから昭和40年になると乗用車が増えて、交通網としては路線バスが主流となり、また名古屋のような大都市では地下鉄の建設が進んでいくなど、全国各地でも路面電車が姿を消していきました。しかし、豊橋は当時の市長や豊橋鉄道、そして何より豊橋市民からの豊橋に路面電車を残すんだ!という強い働きかけもあり、結果として市電が残ったんです。新しい都市デザインの中で市電を中心に据えて都市計画が進んだことが、大きな転機でしたね。

──交通網としての市電が、今のように豊橋名物になったのはいつ頃からですか?

豊橋鉄道さん:
「おでんしゃ」「ビール電車」などのイベント行事が活発になってからですかね。あと、昔からお祭りが盛んなこともあって、豊橋まつりの「花電車」が長く続いていることも大きいと思います。実は、“乗れる花電車”って全国的に見ても少ないんですよ。運営はなかなか大変なんですが(笑)、やっぱり小さいお子さんが喜ぶ姿を見ると、なんとも言えない喜びがありますね。「よくぞ市電とこの文化を残してくれた!」と、先輩方には感謝の気持ちでいっぱいです。やっぱりどんな商売も、地域社会あってのものですからね。

豊橋まつりのときの花電車の様子
2019年の花電車。毎年変わるカラフルなデザインが、子どもに大人気!

白井社長:
花電車、私も子ども心に強く残っています!豊橋鉄道さんの場合、自社のことだけではなく、地域社会と密接につながっているからこそ、「どう豊橋の風景を作っていくか」という、街づくりに関わる部分も担われてらっしゃいますよね。そういうところをすごくリスペクトしていますし、私たちもクックマ号やクックマートを通して、地域社会との絆をもっと強くしていきたいですね。

クックマ号のルーツって?

──今回、クックマ号になったのは、どんな車両なんでしょうか?

豊橋鉄道さん:
クックマ号は780形の783号と言って、もともとは名鉄の岐阜の車両なんです。山奥の揖斐(いび)方面まで走っていたんですよ。そんな風に寒いところを走っていた車両なので、ドアが凍らないためのレールヒーターなど、寒冷地特有の装置も付いていたりするんです。

780形の783号。岐阜から豊橋に引っ越しの様子

白井社長:
かなりマニアック…!鉄道マニアの方が聞いたら喜んじゃいますね(笑)やっぱり豊鉄さんの社員の方は、鉄道好きの方が多いんですか?

豊橋鉄道さん:
僕(梅村さん)はいわゆる「撮り鉄」ですし、社内には鉄道好きも多少はいますよ。鉄道って本当に奥が深くて、独特な魅力というか、“魔力”みたいなものがあるんですよね(笑)最近はSNSでも投稿をしてくださったり、市電のウォッチャーもついてくれているなと実感しますね。市電を撮ってくださる方のために、あえて“撮りやすい走らせ方”をすることも意識しています。豊橋鉄道の特徴として古い車両が多いんですが、車でいうところの「クラシックカー」みたいな電車で。それがマニアの方に人気があるんです。

──クラシックカーというと、どれくらいもつんでしょうか?

豊橋鉄道さん:
昔の電車は、結構もちますよ。鉄板と鉄パイプといういわゆる「枯れた技術・枯れたシステム」なので、手入れと技術さえあれば、100年でも(!)走っちゃいます。逆に最近の電車は基本的に家電製品と同じで、15年ほど経つと部品の交換が必要だったり、対応しないプログラムが出てきてしまったりしますね。そういう意味で、実は一番エコロジーなのは、レトロな古い車両かもしれません。

クラシックカーのレトロな色合いが、マニア心をくすぐります

──全国各地の鉄道会社さんとのお付き合いはあるんでしょうか?

豊橋鉄道さん:
コロナ禍なので近頃は集まる機会は少ないですが、鉄道事業者が集合する会議等では、会議後も残ってよく情報交換をしています。他の鉄道会社さんから部品をいただいたり、修理の仕方を共有していただいたりしますよ。鉄道業界って少し独特で、ライバルが少ないと言いますか、むしろ仲間意識が強いんです。それに、どの会社さんも面白い取り組みをしているので、刺激をいただくことも多くって。長崎、鹿児島、岡山、広島、和歌山、富山などの会社さんは、電車もとってもユニークなんですよ。そんな電車を見ていると、「うちも面白い電車を作りたい!」とワクワクしちゃいますね。

白井社長:
鉄道って男の子心をくすぐりますよね。他の会社さんからは、豊橋鉄道さんのユニークさってどんなところだと言われますか?

豊橋鉄道さん:
やっぱり、「おでんしゃ」「ビール電車」「花電車」の3つですかね。「おでんしゃ」は岡山電気軌道さんからお声がけいただいて、岡山で走らせたこともありますよ。それで代わりに、岡山電気軌道さんのフレンチオードブルが食べられる「フレンチトレイン」という企画を、ホテルアークリッシュ豊橋さんと組んで、豊橋でも運行しました。こうしたコラボレーションができるのも、市電の面白さですよね。クックマ号とも、何か一緒にやってみたいですね!

「フレンチトレイン」車内。プロの手で、味も見た目も美味しいオードブルが並びます

白井社長:
はい、ぜひお願いします!私はローカル企業同士のコラボがとても面白いと思っているんです。ローカルを突き詰めることで、話題になれるというか。クックマート自体も、規模拡大で全国展開とかは全く考えていなくて、地元で既存店をブラッシュアップして着実に地域社会に貢献していきたいと思っているんです。豊鉄さんが「他の会社を競合と思っていない」とおっしゃっていたように、私たちも自分たちのユニークさをいかに追求するか、を大事にしています。

豊橋鉄道さん:
「いかに地域の方に楽しんでいただけるか」って大切です。公共交通機関は日常のことなので、「ただ乗って帰るだけ」ではつまらないと思っているんです。だからこそイベントなり、楽しんでいただける企画をやっているのかもしれないですね。

白井社長:
その点、スーパーと鉄道ってとてもよく似ていますね。私たちも派手に何かをやるのではなく、地味にコツコツ、信頼や愛着を積み上げていく仕事だと思っていて。クックマートのテーマは「楽しむ、楽しませる!」なので、自分たちが楽しんでやった結果、周りにも伝わっているという状態が理想ですね。「リアル×ローカル×ヒューマン=地域の活気が集まる場所」を目指していきます!

豊橋鉄道さん:
お子さんたちからの反響も楽しみです!クックマ号が、豊橋の新たな風景になってくれることを楽しみにしています。

白井社長:
今回のクックマ号を通してクックマートを多くの方に知ってもらい、「クックマ号に乗りたい!」と言ってもらえるような存在になりたいです。

扉にも市電のレリーフが!クックマちゃんもキュンです♡

クックマ号と一緒に「楽しむ、楽しませる!」を豊橋の街へ広めていきたいと、熱い思いを抱く白井社長と、同じく市電で街を盛り上げて行きたいと考える豊橋鉄道さんの対談はいかがでしたか?

次回は【後編】として、運転士さんからも豊橋と市電の魅力を聞きたいと思います!

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