COOK MAGAZINE

こだわりの土耕栽培。安田さんのベビーリーフ!

2023.10.31
COOK MAGAZINE
REPORT:
安田商店 安田弦矢

普通のスーパーではそれほどメジャーではないのに、クックマートではとてもよく売れている野菜があります。「ベビーリーフ」です。

元々は、レストランやブライダルなど、ちょっとオシャレな場所でサラダや付け合わせとして食べられていました。しかし、手軽に、おいしく、様々な種類の栄養を採れるベビーリーフは、次第に普段の食卓でも注目されるようになりました。

お客様からの評判も上々で、生産者さんからは「クックマートは、たぶん、日本で一番ベビーリーフを売ってるお店では?」と言われるほどです。

「ベビーリーフ」とは、単一の野菜の名称ではなく、発芽して30日以内の若い葉っぱの総称です。ミズナ、レッドオーク、ルッコラ、ビート、ピノグリーンなど、品種が数多くあるベビーリーフの葉っぱは、丸い形のものからギザギザなものまで、とっても可愛らしく個性的です。

その名の通り、「野菜の赤ちゃん」で、小さいうちに摘み取るため、普通サイズの野菜と比べて栄養素が凝縮されています。ミネラルやビタミンがたっぷりなので、美容や健康が気になる方にはとてもお勧めなのだそう!

私もよく購入しては食べるのですが、サッと水で洗ってドレッシングをかけるだけでモリモリとフレッシュな野菜がたくさん食べられるのでとても重宝しています。

このベビーリーフの仕掛人で、「農業を楽しむ達人」が愛知県田原市にいるということで、「美容と健康」に興味津々の(!?)クックマートのチーフチェッカー(レジ・接客の担当責任者)のみんなと見学に行ってきました!

ゾロゾロゾロ……田原の農地の中を行く一行。

農場に着くと、さわやかな笑顔で出迎えてくださったのは「安田商店」代表の安田弦矢さんと、関連会社「ベジロジ」取締役の武内さん。

武内さん(左)と、代表の安田弦矢さん(右)

愛知県・渥美半島に広がる田原という場所は、今でこそ全国有数の農業が盛んな地域の一つですが、江戸時代までは「奥郡(おくごおり)」と呼ばれ、大きな河川がないため常に渇水に悩まされ、農業に適さない赤土の荒地が広がる、農業困難地域でした。作れるのはイモやムギなど、少ない水でも育つ作物と畜産ぐらいだったそうです。

それが、55年前(1968年)の豊川用水通水を大きなきっかけとして、渥美半島は日本有数の農業地帯となりました。

安田さんのおうちはお父さまの代に家畜の餌である飼料を手掛けられていましたが、豊川用水通水後の田原の農業の発展とともに、「より農家さんに貢献できることはないか?」と模索をする中で、自らも農業にかかわるようになったのだそうです。

農業に従事し、農家さんの苦労や悩みを理解したうえで、たい肥選択のアドバイスから運搬・散布までサポートするサービス、発芽率の向上を図る「播種冷蔵サービス」など、「農業サポート」を農家さんに提供し、渥美半島の畜産と農業の未来のためにチャレンジし続けている、大変意欲的な生産者さんです。

また、関連会社「ベジロジ」を通じて、田原にとどまらず、全国各地の生産者をネットワークし、生産者がこだわることの「大変さ」「難しさ」「大切さ」「面白さ」を生産者さんに代わって消費者や販売店に伝えるというとても志の高いお仕事をされています。

代表の安田弦矢さん(左)と武内さん(右)

安田さんの発想は、産地や農家さんと接する中で、「困っていること」や「おや?」と思ったことについて、「なんとかならないかな」と試行錯誤することから始まります。そして、「これ!」と思ったら、実際に作っている産地に飛んで行って、集中的に教えてもらい、それをベースに自分たちの地域に合ったやり方に改良していくそうです。

安田さん:「自然という、なんていうかな、コントロールできないものを何とかやるっていうのが面白いんですよね。はじめは何もわからず始めるんだけど、だんだんコツっていうかポイントがわかってきて、年々良くなってるのがすごく楽しい。改善したことが生活の喜びというか、評価に繋がることが楽しいんです」

クックマガジン編集部:「安田さんはキャベツ、とうもろこし、レンコンなど、いろんな野菜を作られていますが、特に思い入れのある野菜はありますか?」

安田さん:「それはやっぱりベビーリーフですね。これを作るきっかけは、元々この辺りはシクラメンなどの鉢花の生産が盛んだったんですよ。それが人々のライフスタイルの変化もあり、20年前ぐらいからお花が壊滅的に売れなくなった時期がありました。鉢花用の高設の棚を配置したビニールハウス施設がどんどん空いてきているのを目の当たりにしたのです」

安田さんのベビーリーフ農場

「我々は元々、飼料屋ですから、農家さんから『こういった棚を使って作れるものはないかな?』という相談を受けるようになっていました。それがもう15年前ぐらいです。そのときにいろいろ調べ物をしていたら、『長野県で高設の棚でベビーリーフを作ってる農家さんがいる』っていうのを聞いて、これは転用できるのではないか? と思ったんです。早速、その農家さんにお願いをして、住み込みで3ヶ月間、朝から晩まで一緒に教えていただいて、作り始めました」

クックマガジン編集部:「一番詳しい方のところに行って学ぶという情熱と行動力が素晴らしいですよね」

安田さん:「当時、ベビーリーフを高設の棚で作るというやり方をしていたのはその方を含めて2軒だけでした。長野はやっぱり気候が涼しいですから、長野でできていることをそのまま渥美半島でできるかというのはまた別問題だというのはありましたが、それをモノにするのは自分たち次第ですし、これを形にするまでが、ある意味、使命みたいなところもありましたのでチャレンジしました」

小さなブロックに分けて種類ごとに栽培されているベビーリーフ

クックマガジン編集部:「ベビーリーフの畑って、一つ一つが小さなブロックに分かれているんですね」

安田さん:「これの最大のメリットはですね、普通、畑っていうのは病気が出ちゃうと連作障害になって、その畑全体が駄目になっちゃうんですよ。その点、ベビーリーフの場合、例え1つのブロックが悪かったとしても、このブロックだけを抜けば、解決しちゃうっていうところがやるメリットですね。まぁ、実際にはこれを全て手作業でやってますので結構大変なのですが」

クックマガジン編集部:「ベビーリーフづくりで一番苦労されるのはどんなところですか?」

安田さん:「季節や気候、葉っぱの種類によって栽培の方法などを細かく変えているんですよ。夏と冬でベビーリーフは生育期間が全く違うんです。夏は早いと15日間でできますが、冬は45日と、倍以上(!)かかかります。冬は生育に時間がかかりますが、その分、葉っぱの重さは2倍になります。これはお好みですが、冬場のベビーリーフはずっしりと食べ応えがあり、夏の野菜は薄くてやわらかいんです。よかったら、そこらへんにあるのをちょっとちぎって食べてみてください」

モグモグ……

チェッカー陣:「おいしい! 味がしっかりしている!」「種類によって違う!」「濃い!」

安田さん:「特に大変なのは夏場の作業ですね。夏場はハウスの中が大体56度(!)まで上がるんですよ。作業量は圧倒的に夏場が多い。でも、我々としては冬であろうと夏だろうと価値は変わらないと思っています。ただ、作業量が変わるので、自分たちの工夫が必要ですね」

クックマガジン編集部:「そのような細かい苦労や調整があって、ここ渥美半島でベビーリーフが作れるようになったのですね」

安田さん:「苦労して、渥美半島で作れるようになったのですが、初めはお客さんにとって馴染みがないものですから、『この野菜、どうやって食べるの?』という状況で、あまり売れない(笑) そこからスタートし、今、クックマートさんで扱ってもらって9年ぐらいですか。徐々に馴染みが出て浸透してきて、今ではクリスマスとかすごい数売れるようになりましたね」

クックマガジン編集部:「一度食べるとおいしさをわかってくれてリピーターになる方が多いですね。鮮魚のカルパッチョや精肉のローストビーフと合わせる方も多いです。安田さんのベビーリーフは味が濃くておいしいと評判ですが、何が一番違うのでしょう?」

安田さん:「ベビーリーフは暑さに弱いこともあり、安定供給のため、水耕栽培で作られることも多いんです。しかし、水耕栽培だと、どうしても水分量が多くて腐りが多いんですね。私たちのこだわりは『土』で作る『土耕栽培』ということです。太陽の光を浴びて土で育った私たちのベビーリーフは、水耕栽培のものと比べ、味が濃く丈夫で栄養価が高いものに育っています」

話を聞くだけでも大変そうな道のりを、安田さんは終始「何てことはない」と言わんばかりの笑顔で楽しそうにお話ししてくださいました。

初めて産地見学に参加したチェッカー陣に感想を聞いてみると……

 

――まさに、「楽しむ、楽しませる!」を体現されている方だと思います。

――今回のベビーリーフ見学では、安田さんの野菜に対する情熱を知る事ができました。ベビーリーフや安田さんの野菜がどういう経緯でできたのかという話には、新しいことへの挑戦や、探求心をもち追求して行く事の楽しさを自分も忘れずに持っていたいなと思いました。

――自分の仕事に誇りと自信、愛情を持ったみなさんの姿や笑顔は本当に素敵でした。そんなカッコ良さを感じてもらえるような人で私もありたいです!

 

ベビーリーフのおいしさの秘密とともに、安田さんと武内さんの仕事への姿勢に大いに刺激を受けたクックマートチェッカー陣とクックマガジン編集部。

「できることをやっていくうちに見えてくるものがある」。そういう「着実な努力」を「楽しんで」やってらっしゃるところ、ポジティブなリアリストであるところが安田さんの素晴らしさだと思いました。このたびは誠にありがとうございました!

最後にみんなで、「ベビーリーフ(?)ポーズ」!

Photo:クックマガジン編集部

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